Dr. Vodder School  Japan ボダー博士、マニュアルリンパドレナージ(MLD)について Dr. Vodder School  Japan ボダー博士、マニュアルリンパドレナージ(MLD)について

ボダー博士について About Dr.Vodder

ボダー博士によるマニュアルリンパドレナージ(Manual Lymph Drainage:MLD)は身体に強力な効果をもたらす、優しく非侵襲的な手技です。 オーストラリア、ヨーロッパ、北米での研究では、単独の治療法として、また他の治療法と組み合わせた場合の有効性が示されています。1932年にフランスでエミールとエストリッドボダーによって開発されたMLDは、リンパの流れを促し、組織の排液を補う最もよく知られた手技へと成長してきました。

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リンパドレナージの創始者エミール・ボダー

1: エミール・ボダー博士とマニュアルリンパドレナージ(MLD)の歴史

1896年2月20日
デンマークの首都コペンハーゲンの旧市街で生まれる
大学で生物学、鉱物学、植物学、医学、細胞学、顕微鏡検査などを学ぶ
マラリア感染により、医学の道を断念、理学療法に関心を持つ

1929年
妻エストリッドとともにフランスのリビエラに移住
カンヌに理学療法研究所を設立し、患者の治療を行う

1936年
MLDをパリで一般に公開する

1965年
ドイツのエッセンに学校を設立

1971年
オーストリアのヴァルクゼーにドクターボダースクールを設立

1978年
ドイツの健康保険会社からCDTが保険適応となる

1985年
功績が認められ、理学療法協会 (VPT) からメダルを授与される

1986年2月
コペンハーゲンにて90歳で逝去

 

1896年2月20日にコペンハーゲンの旧市街で生まれました。 彼はコペンハーゲン大学で生物学、鉱物学、植物学のコースに入学し、一方で医学、細胞学、顕微鏡検査も学びました。 彼は早くから理学療法にも興味を持っていました。彼はマラリアに感染したために、8学期に医学の勉強を中断せざるを得ませんでした。1929年に妻のエストリッドとともにフランスのリビエラに移住し、その後、カンヌに理学療法研究所を設立し、そこで患者を治療しました。

2: ボダー博士とリンパ系との関わり

彼は何世紀も前に神秘的な「透明な液体(clear fluid)」について書いた過去の科学者の名前や出版物に精通しており、リンパ系全体を最初に説明した人物です。ラテン語で書かれた4つの論文の中で、彼はリンパ系が私たちの体を通して「少しずつ流れる(trickles)」自然な浄化システムであることを強調しています。彼は人体のリンパ管の発見を「Vasa Lymphatica」というタイトルの科学研究で発表しました。関連する出版物の研究により、すぐに人間が生物学的な単位であることを確信しました。 バーナード、カレル、ドリンカーの出版物から、彼はリンパ液が遍在し、そしてそれが人の生命に必要な環境の不可欠な部分であることを学びました。

「リンパ系は人間と動物の生命にとって最も重要な有機体である」とドリンカー教授は主張しました。 1929年、エミール・ボダーは患者と協力し、経験を積み重ね、当時としては突飛に聞こえる仮説を立てました。彼は皮膚の傷、偏頭痛、副鼻腔炎に悩む患者の頚部のリンパ節の腫れを触診しました。彼は、腫れたリンパ腺(現在のリンパ節)のうっ滞がこれらの症状の根本原因であり、リンパ節が組織の排水をする役割を果たすことができなくなったからと考えました。彼は、水門を開くように適切なマッサージによってうっ滞を解消し、それによって余分な水分が体内から排泄され、正常な状態を回復できると考えました。「皮膚に働きかける」円形のポンプのような動きのテクニックを注意深く用いることで、望んでいた結果が得られました。 エミール・ボダーの先駆的な偉業、あるいは無謀という人もいるかもしれませんが、それは、当時、リンパ節に触れることは絶対的なタブーであったにもかかわらず、腫れた頸部リンパ節を施術したことでした。苦痛症状は消えさり、彼はリンパ系の諸症状に対する有効な普遍的な治療法を発見できたかどうか自問しました。

1933年、ボダー夫妻はパリに移り、そこで生物学の研究を続けました。夫妻は特にリンパ管系の解剖学と生理学に興味を持っていました。2人は解剖学アトラスの中に、解剖学者サッピーによる銅版画の図版を見つけました(『Description et iconographie des vaisseaux lymphatiques considerées chez l’homme et les vertébrés』 Paris 1885年)。 これらのイラストは、エミールにとって、直観と多くの臨床試験を駆使して、体系的で明確な手法を開発しようとするための重要な背景情報でした。彼は、まったく新しいマッサージ技術が必要であると認識しました。つまり、血流の増加を避けるために非常に軽い圧力で円を描くようなマッサージを行うというものです。セラピストがさまざまな病状に対応し、多くの効果をもたらすことを可能にする、優しい手のストロークの技術を確立したことは、ボダーの功績です。1936年にエミール・ボダーはドクターボダーズマニュアルリンパドレナージ(DR. VODDER’S MANUAL LYMPH DRAINAGE)と呼ばれる彼の手法をパリで一般に公開しました。ボダー夫妻はフランスで11年間暮らし、第二次世界大戦の勃発によりコペンハーゲンへの帰還を余儀なくされました。

3: 困難な状況下での新たな始まり

エミール・ボダーがヨーロッパの様々な機関から招待され、講義やトレーニングコースを通じて彼の手法を普及したのは、1950年代初頭になってからでした。1966年にギュンター・ウィットリンガーはエミール・ボダーと初めて出会いました。当時の問題は、徒手での技術がリンパ系にこれほどの影響を与える可能性があると医師も科学者も想像できなかったことです。MLDのうっ滞改善効果を証明する上でのマイルストーンは、ボダーのマニュアルリンパドレナージの特別な技術、その優しい円形の動きと圧の増減が皮膚のリンパ管(リンフアンジオン)の収縮速度を加速させると主張したミスリン教授の声明でした。ミスリン氏は、「ボダーがこの特別な手法を開発していなかったら、私たちがそれを発明しなければならなかったでしょう。」と語りました。この発言は1970年代に遡ります。

ボダーの手法はシンプルですが独創的で、習得は困難ですが、患者に対する効果は比類ないものです。(The Vodder method is simple but ingenious, difficult to learn but unique in its effect on patients.)これらの優しい円形のストロークは常に治療対象の組織に反応し、治療効果があるだけでなく、患者に心地よいリラックス感をもたらします。

4: その手法はインチキだと非難された

これは特にこの方法をすでに使用して大きな成功を収めている人にとっては厳しい言葉でした。科学者や彼らの臨床試験はその効果を証明し、最終的にボダー博士のマニュアルリンパドレナージの躍進と認識を保証しました。ドイツの健康保険会社は、MLD治療を保険で補償し始めました。ヒルデガルトとギュンター・ウィットリンガー夫妻はエミール・ボダーに何度も会い、彼が教養のある寛容な紳士であると分かりました。エミールは2人にとって教師であり、彼らの人生に多大な影響を与えました。以下のような彼の言葉は勇気を与えました。「私たちの主目標は、人生における自分の道を見つけ、それが自分の道であると認識し、一貫してそれに従うことでなければなりません。(“Our chief goal must be to find our way in life, to realize that it is our way and to follow it consistently.” )」。エミール・ボダーはこの信条に従って生きました。彼の生涯の功績が認められ、1985年に理学療法協会 (VPT) からウィルヘルム・ロールバッハ・メダルを授与されました。このメダルの授与により、専門家協会もエミール・ボダーが彼の名にちなんで名付けた手法の考案者であることを確認しました。

5: ドクターボダーのマニュアルリンパドレナージ(MLD)

エミール・ボダーは1986年2月、90歳の誕生日の直前にコペンハーゲンで亡くなりました。長年にわたり忠実な伴侶であった妻エストリッドは、10年後に99歳で天に召されました。彼女は夫の研修コースを手伝い、多くの講演旅行に同行しました。エミール・ボダーほど理学療法に消えない足跡を残した人物はおそらく数少ないでしょう。多くの科学者、医師、セラピストらが、75年以上前に発明された方法の普及に貢献し、MLDが世界的に認知され、医学や理学療法で使用されるようになりました。

この技術がこれほど特徴的なのはなぜでしょうか?ボダー自身も「皮膚で」研究をしました。彼は円形またはらせん状のストロークを使用し、圧を30トール(約4キロパスカル) まで上げたり、実質的にゼロまで下げたりしました。この圧の一定の変化により、ポンピング効果が発生します。圧はリンパの流れの自然な方向に向かって増加させます。ストロークには皮膚と皮膚の接触が含まれ、その結果として皮膚が優しく動かされます。この技術は通常、乾燥した肌に用いられますが、体毛の多い部分にはオイルを1~2滴使用する必要があるかもしれません。

オイルは同様に、動かない皮膚領域(瘢痕、潰瘍の縁、硬い浮腫など)や、非常に乾燥した皮膚や荒れた皮膚(湿疹など)にも使用されます。MLDセラピストは、安定したリズミカルなストロークで治療を行います。ストロークの各速度は、リンフアンジオンの運動能力の最大頻度によって決まります。いかなる状況においても、これらのストロークによって皮膚が赤くなったり、痛みが生じたりしてはなりません。 現在、様々な病状に使用されている、いわゆる治療手法は、問題のある組織の状態に合わせ調整されたベーシックのボダー技術のすべてであり、必要に応じて運動と組み合わせます。

ドクターボダーの技術は、常に頚部にあるリンパ節とリンパ管、そして両側の静脈弓にある大きなリンパ管の接合部(頸静脈と鎖骨下静脈の接続部)の治療から始まります。MLDが効果的であるためには、適切な専門技術の使用と、関連する病状のニーズを満たすように個々の治療セッションの長さを調整することが不可欠です。他のマッサージと比較して、MLDのセッションは非常に長くなります。 典型的なMLDセッションには30~45分が必要ですが、症状によっては90分に延長される場合があります。

6: MLDの効果

MLDは3つの主要な効果をもたらしますが、そのすべてが科学的に研究され確認されています。

1.うっ滞除去効果
心性浮腫や腎性浮腫などの全身性浮腫を除き、様々な浮腫にMLDは適用できます。MLDにより、リンパ経路自体のリズムが通常の最大20倍に加速されます。この強化されたドレナージ効果により、体内の過剰な水分が速やかに排泄され、正常な組織状態への回復を促します。

2.交感神経抑制効果
MLDはとても心地良いです。施術を受けて眠くなる人も少なくありません。優れたセラピストによる安定したリズミカルなハンドストロークは、治療を成功させるための必須条件です。

3.鎮痛効果
MLDにより皮膚の機械受容体を刺激することで痛みの緩和が期待されます。これはゲートコントロール理論に基づくものです。また、MLDを行うことで発痛物質である炎症メディエーターがより急速にリンパ系に排出され、疼痛が軽減されるとも考えられています。

4.免疫学的効果
MLDは、体の防御システムが存在する場所(リンパ節など)へ細菌やアレルゲンなどの輸送を加速するのに役立ち、防御システムでは、リンパ排液速度の増加によりリンパ球やマクロファージの感作が高まります。マクロファージは、血流を介してより迅速に移動して「作用現場」に到達し、食作用によって介入することができ、これにより免疫力が向上します。

参照ウェブサイト
・Wittlinger Lymphedema Clinic 
 https://www.lymphedema-clinic.com/manual-lymph-drainage/technique.html

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